
神奈川県立汐見台病院
産科 副科長
早乙女智子 先生
第2回の今回は、神奈川県立汐見台病院産科副科長の早乙女智子先生に、女性の抱えるGHの悩みとあわせてお話をうかがいました。
- GH(性器ヘルペス)に感染しやすい時期やタイミングなどはあるのでしょうか?
- 早乙女:データとして明らかになっているわけではありませんが、GHにかかるタイミングとして一つ言えるのは、「パートナーが替わったとき」が多いということです。感染するときはうつす相手に症状が出ていないことが多く、さらに、感染したからといって必ずしも全員に症状が出るわけではありません。しかし、症状が出た場合には感染から発症までの潜伏期間が数日と、短いという特徴があります。10~20年前と比べて最近の性行動ではパートナーが替わりやすくなっていますから、その分リスクは高まっていると言えるでしょう。ただ、“遊んでいる人がかかる病気”と考えるのは誤った見方で、セックスの経験がある人なら誰もがかかる可能性があります。実際には、たまたま体調が悪く抵抗力が落ちているときにアンラッキーにもうつってしまったというケースが多いのです。感染の確率はコンドームを使用することで低くすることができますが、100%防げるわけではありません。感染した後すぐには症状が出ない方もおり、何年も経ってから症状が出たような場合には、“いつ”“誰から”うつったのかが分かりにくく、夫婦間などで揉め事になる場合もあるようです。
- GHの患者さんの年齢的な傾向や受診動向の特徴はありますか?
- 早乙女:当院では20代~30代の患者さんが中心です。GHは水疱・疼痛・かゆみ・発熱などの症状が初感染時に一番強く出るので放っておくことができず、感染して発症したらほぼ間違いなく病院に駆け込んで来ます。患者さんのほとんどは、ウェブサイトなどで情報を探して「GHだと思うのですが...」と当たりをつけて来ます。情報を仕入れてから受診する傾向は、全国的にも見られるのではないでしょうか。
- 患者さん、とりわけ女性患者さんの心配事、悩みはどのようなものなのでしょう?
- 早乙女:GHが一生付き合わなければいけない病気だとわかって来院するので、それを前提とした不安が多いですね。まず再発に関しては、「いつ再発するの?」「再発時も今(初感染)と同じくらい強い不快感やかゆみがあるの?」といったものです。こうした不安に対しては、抵抗力が落ちているときに再発しやすいので体調管理が大切なこと、再発時の症状は初感染と比べて軽くなることをお話しています。
また、「パートナーにうつしてしまうから、もうセックスはできない」とか「妊娠・出産はもうできない」など間違った思い込みで落ち込んでいる患者さんも多くいらっしゃいます。他の感染症などでは気軽に友人に打ち明けたりしているようなのですが、GHの場合はやはり潜伏感染だということが影響しているのか、「パートナーに言うか、言わずにいるか」でまず悩み、セックス・妊娠・出産への不安などを、親はもとより友人にも相談できずに1人で抱えてしまっています。なかには、不眠症や食欲不振、引きこもりになってしまう方もいて、それほど女性の悩みは深刻です。 - 2006年9月から保険適用になった再発抑制療法の効果はいかがですか?
- 早乙女:現在数人に処方していますが、再発抑制療法は患者さんにとって3つの面で大きなメリットがあると実感しています。まずは、再発の回数が減り、再発したとしても症状が軽くてすむという点。たとえば月経のたびにGHの症状に悩まされていた患者さんでも、月経を無事に乗りきることができています。2つ目としては、パートナーへの感染を抑制する効果。「薬を飲んで再発が抑えられていれば感染の確率は低いから」と助言できるようになり、対処方法が存在することは医師の私としても心強いものがあります。3つ目は、「いつ再発するかわからない」「パートナーにうつしてしまうかもしれない」という先の2つの不安が軽減する精神面でのメリットです。こうした先行きの見えない不安はウイルス感染特有のもので、今まで患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ;生活の質)をものすごく低下させていましたが、GHについては「備えがある」ということが確実な安心感につながっています。実際、再発してから来院する患者さんと、再発する前に受診して薬を処方してもらった患者さんとでは、表情がまったく違って、後者の患者さんの方が明るいんですよね。
- 妊娠・出産についてはどのようにアドバイスされているのでしょう?
- 早乙女:初感染から1年間は再発率が高いので、体調管理と薬でうまくコントロールすることに専念するように指導しています。妊娠すると、どうしても抵抗力が弱まってしまいますので、数年たって落ち着いてからの妊娠を勧めています。
運悪く分娩のタイミングで再発した場合は新生児への影響を考えて帝王切開を勧めることもありますが、あくまで選択肢の一つであり、多くの場合は普通分娩が可能です。 - パートナーに言うか、言わずにいるか、迷っている人へのアドバイスは?
- 早乙女:本当はパートナーにもGHのことを伝えて、2人でGHについて考えていけたら理想的ですよね。ただ、この問題は本当に難しく、打ち明けた結果別れてしまうカップルもいる一方で、GHを通じてお互いを今まで以上に思いやり、絆が強まったカップルもいます。2人の密度によって、話すタイミングや伝え方がおのずと異なってくると私は思います。まだ自分のこととして伝える勇気がないときは、「友だちの話なんだけど、どう思う?」と切り出してどのように反応するのかを確かめるのも一案ですね。
- この病気と付き合っていくために必要なことは何でしょう?
- 早乙女:全身に広がったり死に至ったりするような病気ではないのであまり暗くならずに、「ウイルスをうまく飼い馴らす」方向で考えることが大切です。ウイルスが暴れるのは、「最近、働き過ぎ、遊び過ぎ、ダイエットのし過ぎじゃない? 少し休めば?」という警告。体調管理のバロメーターだと思って少し生活を見直すと、再発は減ってきます。再発抑制療法もウイルスを飼い馴らすのに必要な道具の一つとして、うまく活用してほしいですね。




